こんにちは、管理人の『そら』です。
今回は、「褒められると、反射的に『そんなことないです』と否定してしまう」「うれしい気持ちはあるのに、何と返せばいいのか分からない」というお悩みについてお答えします。
職場で作った資料を「分かりやすかった」と言われて、「いえ、全然です」。友達に服を褒められて、「安かっただけだよ」。その場では謙遜したつもりでも、あとから「せっかく言ってくれたのに、否定しすぎたかも」と気になることはないでしょうか。

「ありがとう」と返したら、自分でもそう思っているみたいで恥ずかしいです。
でも、「そんなことないです」と毎回否定するのも、感じが悪い気がして迷います……。

相手の評価に全面的に同意するか、すべて否定するかの二択にしなくても構いません。
まず感謝を伝え、必要なら自分の気持ちや関連する情報を一つ添える返し方があります。
褒められたときは、評価より先に言葉へ返事をする
褒められたときに迷ったら、基本形は「ありがとうございます」「ありがとう」です。
感謝を伝えることは、「相手の評価がすべて正しい」「自分は優れている」と宣言することではありません。自分に向けて言葉をかけてくれたことへ、返事をする方法の一つです。
褒め言葉を全部認める必要はありません。
まず「ありがとう」と返し、話を続けたいときだけ、気持ちや関連する情報を添えてみましょう。
先に決めておく一文
「褒められたら、まず『ありがとうございます』まで言う」
理由や謙遜を続けるかは、そのあとに決めます。スマートフォンのメモに残しておくと、急に褒められた場面でも思い出しやすくなります。
褒められたときに使える4つの返し方
ここからは、職場、友人、家族との会話で使いやすい返し方を四つに分けます。すべてを覚えようとせず、自分が言いやすいものを一つ選んでみてください。
短く終えたいときは「ありがとうございます」
急に褒められたときや、その場で言葉が浮かばないときは、感謝だけで返します。
- 「この資料、分かりやすかったです」
- 「ありがとうございます」
- 「今日の服、似合っているね」
- 「ありがとう」
- 「丁寧に対応してくれて助かりました」
- 「ありがとうございます」
沈黙を埋めるために、すぐ「でも」「たまたまです」と続ける必要はありません。相手が次の話題へ進めば、返事はそこで終わりです。
うれしかったときは、気持ちを添える
褒められてうれしかったなら、その感情を短く伝えます。評価の内容へ同意するより、「そう言ってもらった自分はどう感じたか」を答える形です。
- 「ありがとうございます。そう言ってもらえて、うれしいです」
- 「気づいてもらえて、うれしいです」
- 「ありがとうございます。そこを見てもらえて、励みになります」
「私は本当に仕事ができる」「この服は絶対に似合っている」と言わなくても、うれしさは伝えられます。照れが強い日は、「うれしいです」と短く添える形もあります。
会話を続けたいときは、関連する情報を添える
感謝だけでは会話が止まりそうで気まずいときは、褒められた内容に関する情報を一つ足します。
- 資料を褒められたとき
- 「ありがとうございます。結論を先に書くように意識しました」
- 服や持ち物を褒められたとき
- 「ありがとう。この色は私も気に入っています」
- 料理を褒められたとき
- 「ありがとう。今日は少し薄味にしてみました」
- 準備や努力を褒められたとき
- 「ありがとうございます。今回は早めに準備を始めました」
買った場所、工夫した点、選んだ理由など、話しやすい情報を一つ選びます。長く説明しすぎないほうが、自分にとっても返事の負担が増えにくくなります。
自分の見方と違うときは、感謝と補足を分ける
相手の評価が自分の感覚と合わないとき、無理に同意する必要はありません。ただ、「全然違います」「私なんて」とすべてを打ち消す前に、相手の言葉への返事と、自分の見方を分けて伝えられます。
- 「ありがとうございます。自分ではまだ練習中だと思っています」
- 「そう感じてもらえたなら、うれしいです。自分では気づいていませんでした」
- 「ありがとうございます。今回は周りにも確認してもらいながら進めました」
- 「ありがとう。自分ではまだ慣れないけれど、この色は気に入っています」
複数人で行った仕事を褒められたときも、自分の関わりを消して「私は何もしていません」と言う必要はありません。感謝を伝えたあとで、協力してくれた人やそれぞれの役割を紹介すれば、自分の仕事と周囲の力を分けて話せます。
迷ったときの短い返事
| 場面 | 返事の例 |
|---|---|
| まず返事だけしたい | 「ありがとうございます」 |
| うれしさを伝えたい | 「ありがとうございます。うれしいです」 |
| 会話を続けたい | 「ありがとう。ここは少し工夫したんです」 |
| 自分の見方と違う | 「ありがとうございます。自分ではまだ練習中だと思っています」 |
最初に使う一文を決めておくと、その場で四つから選び直さずに済みます。
なぜ「そんなことないです」が先に出るのでしょうか
褒められたときに否定が先に出る背景は、人によって異なります。「認めたら自慢に聞こえそう」「相手は社交辞令かもしれない」「自分では褒められるほどだと思っていない」など、いくつかの迷いが重なることもあるでしょう。
また、急に褒められて返事を考える時間がなく、使い慣れた「いえいえ」「全然です」が口から出る場合もあります。否定した自分を責めるより、次に使う短い言葉を決めておくほうが、実際の会話では試しやすくなります。
褒め言葉への返し方は、受け入れるか否定するかだけではありません
2022年に公表された「自然会話コーパスに見られるほめへの応答」では、二つの会話コーパスに収録された、上下関係のない同世代の学生同士の自然会話を分析しています。主な対象は、「すごい」を含み、相手本人や相手に直接関係することを褒めた場面への応答です。
分析では、褒めを直接受け入れずにかわす「回避型」が最も多く、受け入れる応答が次に多く見られました。また、会話の流れの中で、受け入れと回避を組み合わせるやりとりも確認されています。
この研究が扱ったのは、同世代の学生同士による、「すごい」を含む褒めへの応答です。対象となる年代・関係性・褒め言葉の範囲が限られている点には注意が必要です。
それでも、「日本語では必ず謙遜するのが正しい」と一つの形だけに決めず、会話には複数の返し方があると考える手がかりになります。
関連する情報を添える返し方も、実際の会話で使われています
2026年に公表された「日本語会話におけるほめに対する『情報的コメント』の応答」では、20代の日本語母語話者による、同性で対等な関係の24組の会話を分析しています。初対面同士と友人同士が各12組で、20分間の会話を録音・録画し、その日の聞き取りで双方が本心からの褒め言葉だと認識したやりとりを研究対象にしています。
友人同士の「褒めに対する応答」130件のうち、関連する情報と自分の評価や感情を示す「情報的コメント」は32件でした。初対面同士では46件中20件で、研究では「情報的コメント」だけを述べる場合のほか、感謝や喜び、同意、不同意と組み合わせる返し方も観察されています。
この数字が示すのは、特定の条件で収録された20代の会話内での割合です。日本人全体の傾向や、返答による好感度の変化まで確かめたものではありません。
この記事の例文は、研究で示された「褒められた内容に関連する情報を添える」という発想をもとに、日常で使いやすいよう新たに作成しました。
「ありがとう」で会話が一区切りになることもあります

「ありがとうございます」までは言えそうです。
でも、そのあとに会話が止まったら、気の利かない人だと思われないでしょうか……。

言葉を続けることだけが、会話ではありません。
うなずいたり、少し笑ったりしながら、相手の次の言葉を待ってみてください。
相手がどう受け取るかは、その場の関係や状況によります。ただ、感謝まで伝えた時点で返答はできています。
数秒の間ができても、慌てて自己否定の言葉を足さず、そのまま相手の様子を見る方法があります。
褒め言葉のように聞こえても、受け取りたくない言葉は断ってよい
すべての肯定的な言い方へ、感謝を返さなければならないわけではありません。見た目や体について繰り返し触れられる、からかいや皮肉に聞こえる、褒め言葉のあとに無理な要求をされるなど、自分にとって負担になる場面もあります。
2026年の研究が対象にしたのは、会話の当事者双方が本心からの褒め言葉だと認識したやりとりです。嫌味、からかい、望んでいない評価への対応まで、同じ研究結果で説明することはできません。
返したくない話題では、次のように短く線を引く方法があります。
- 「見た目についてのコメントは、控えてもらえると助かります」
- 「その話題は少し苦手なので、別の話にしたいです」
- 「そのことには答えません」
同じ言葉が繰り返され、相手へ伝えることに怖さがある場合は、一人で言い方を工夫し続けず、信頼できる人や職場の相談先へ状況を話すことも検討してください。相談するときは、いつ、どこで、誰から、どのような言葉を言われたかをメモしておくと、起きたことを説明しやすくなります。
褒められたあとの「一人反省会」が続くときは
褒められた場面が終わったあとも、「あの返し方でよかったかな」「自慢に聞こえなかったかな」と何度も思い返すことがあります。そのときは、相手が実際に言ったこと、自分が返したこと、あとから浮かんだ予測を分けてみてください。
会話のあとに言葉を繰り返し思い返してしまう場合は、次の記事で、事実と次に変えたいことを短く整理する方法を紹介しています。

また、褒められたときにも「すみません」が先に出る方は、謝罪、感謝、質問、お願いを分ける言い換えも参考にしてください。

最後に
褒められたときの返し方は、「全部認める」か「謙遜して否定する」かの二つだけではありません。短く終えたいなら「ありがとうございます」、うれしかったら「うれしいです」、会話を続けたいなら関連する情報を添えられます。
相手の評価と自分の見方が違うときは、感謝と補足を分けて伝えます。返事が思いつかない日は、「ありがとう」と伝えたところで会話を区切る方法もあります。

褒め言葉に同意するのではなく、言葉をかけてくれたことへ返事をすると考えれば、「ありがとう」と言えそうです。
会話を続けたいときの一言も、先に決めておきます。

最初から気の利いた返事を用意しなくても、言葉を受け取ったことは伝えられます。
次の機会には、いつもの「そんなことないです」の前で、ひと呼吸だけ置いてみてください。
褒められたときに返事を迷った場面や、言われて困った言葉があれば、「お便りポスト」で聞かせてください。個別の回答をお約束するものではありませんが、今後の記事づくりの参考にさせていただきます。
参考資料
- 「日本語会話におけるほめに対する『情報的コメント』の応答」/社会言語科学会/2026年(2026年8月29日確認)
- 「自然会話コーパスに見られるほめへの応答——『ほめられたら謙遜する』という定説を再考する」/現代日本語研究会/2022年(2026年8月29日確認)

